10分でわかる Beaconとはなにか?なぜ注目されているのか?


AppleがiBeaconを発表したのが2013年。以来、この「Beacon」という得体の知れない技術についてチラホラと聞くようになりましたが、まだ市民権を得たとは到底言い難く、実際Beaconについて真剣に考えているのはBeacon端末の販売代理店、一部のテックギーク及びマーケターだけと言っていいでしょう。またそんな人々の中でも「クーポン送ったりナビゲーションに使えたりっていうサービスは聞いたことあるけど、実際どういう仕組みなの?」という方も多くいるはず。

今回はそんな方、またクライアントや社内にBeaconの仕組みとその可能性を伝えなければいけない方のために、Beaconの仕組みとそのすごさを10分で読み切れる長さでまとめました。

Beaconとは?

Bluetoothという信号の発信機です。信号を数秒に一回、半径数十メートル範囲に発信します。ただ普通のBluetoothだとすぐに電力を使い果たしてしまうのでBluetooth Low Energy(BLE)という極力電力を使わない規格を使用しています。映画などに出てくる「ピコン、ピコン」というレーダーに似ているかもしれません。
各Beaconには名前(ID)が付いています。ここでは仮に「Bくん」としましょう。

その発信機で何ができるの?

一番簡単なことでいえば、スマホなどの受信端末がその範囲内に入ってきたら、スマホが「お!Bくんの信号を受信した!」と感知します。さらにBくんが数秒後に送る信号をまた受信すると「Bくんからまた信号がきました!」と、その範囲内にいる間は常に信号を受信し続けます。
1355-1

受信したスマホには何が起きるの?

Bくんの信号を受信したスマホは「Bくんの信号を受信しましたよ」という情報をサーバー(要はデータセンター)に自動的に送ります。
するとサーバー側には「◯◯というスマホがBくんの信号を受け取った」=「◯◯は今Bくんの近くにいる」という情報が届きます。
1335-2 この技術を応用したのが「位置情報サービス」です。これを複数の発信機で実施すると「Bくんの次はCくん(発信機)のところに反応した」というふうに、スマホの持ち主がどこからどこへ移動したかがわかります。またどの発信機の範囲内で立ち止まったかなども把握します。
これを例えば複合施設で行うと「正面口から入ってくるとみんな手前のお店から順番に回ってしまって、一番奥のお店に行き着く前に帰ってしまう」「みんなトイレにいく前に迷っているようだから、トイレまでの標識をもっとわかりやすくしよう」という情報が得られます。

詳しくはこちら:Beaconで取得したデータを可視化するアナリティクスツールが遂に登場!Beacon Analytics

※「なんか誰かに尾行されてるみたいでイヤだ!」
もちろんスマホを持っている人すべての位置情報を把握できるわけではありません。Bくんの信号を受信できるのはBluetooth受信機能をONにしているスマホだけです。またBeaconを導入している企業の多くは行動分析を行っていません。

位置情報を受信するだけなの?

その場所(Bくんの近く)にいるスマホユーザーに何らかのメッセージを送りたいという場合は、サーバーに「Bくんの信号を受信したスマホにはこの情報を送ってください」という指令を事前に登録しておくことができます。すると、Bくんの信号を受け取ったスマホすべてにその情報を送信されます。

この技術を応用したのがクーポンなどの「プッシュ通知」です。例えばBくんが食品コーナーに置いてある発信機だとすると、Bくんの範囲内に入ったスマホユーザーに対して「今日はアジを大特価で販売しています!」という宣伝を送ったり、「このクーポンを受け取ったあなたにだけコロッケ15%OFF」といったクーポンを配布することもできます。
1355-3
※「そんなことしたらスマホが延々と鳴りっぱなしになるじゃないか!」
サーバーから情報が送られたからって、それをスマホに表示させるプログラムがなければスマホは何も反応しません。そのプログラムこそが「アプリ」で、サーバーから送られたプッシュ通知はあくまで「アプリの通知」という形で送られます。つまり、そもそもユーザーがそのアプリを持っていなければ情報は届きません。

つまり位置情報から行動を解析したり、プッシュ通知でクーポンや情報を送るだけの発信機?

受け手がアプリを持っていて、尚且つBluetoothをONにしているという前提でいえば、基本的にはそれだけです。ただ、シンプルなだけに応用が利くのがBeaconの魅力です。さまざまな施策から解説しましょう。

【より親切なナビゲーションができる】
ユーザーが目的地を登録すると、そこまでの道のりを施設内に置かれたBeaconが案内してくれるということができます。また、スマホに搭載されているカメラと連動させればより視覚的に道案内が可能です。
827-3
【人によって送る情報を変える】
スマホからの情報をサーバーが受信する際に「◯◯というスマホがBくんの信号を受け取った」と説明しましたが、仮にアプリ内で年齢や性別、職業などを登録しておけばその人に合った情報を送ることができます。例えばサーバーに「Bくんの信号を受信したスマホのうち、男性にはスポーツ用品、女性には化粧品の情報を送ってください」という指令を登録すれば、同じ場所にいても属性によって違う情報が送られます。

逆にこうした属性をそのまま行動分析に活かすこともでき、例えば「30代女性は入口からエレベーターに直行する傾向がある」「50代男性は分岐点に差し掛かると左にいく傾向がある」といった分析も可能です。

【周辺に誰がいるかが教えてくれる】
例えばBくんの周りに複数のユーザー(BluetoothをONにしており、アプリを持っている人)がいるとします。すると、サーバーには「この人と、この人と、この人がBくんの信号を受信しました!」という情報が集まり、サーバーはこの情報を各ユーザーに共有することもできます。

これをビジネスイベントなどで活かすと、例えば事前に「こんな人と会って話をしたい」という情報を登録しておけば、その条件に合った人が近くにいるとそれを知らせてくれる、という使い方もできます。

【スマホではないデバイスにも指令を送れる】
サーバーからの指令は何もスマホに戻すだけではなく、その他のデバイスを作動させることもできます。例えばKDDIが実施した「SYNC YELLプロジェクト」では、予め専用アプリを受け取っていた若者が上京し、Beacon端末が設置された大型ディスプレイの前を通ると、ディスプレイにお母さんや友人など故郷からの愛情に溢れたメッセージ映像が映し出されるという新しいBeaconの使い方をしています。
822-1 詳しくはこちら:新しい技術、新しい感動! Beaconを活用した心温まるプロモーション事例

Apple、Facebook、Twitter、Google・・・なんで巨大企業がBeaconを導入しているの?

AppleとGoogleは言うまでもなく、iPhone(iOS)とAndroidというスマホの2大OSを持っています。そして各OSには標準搭載されているアプリがあります。FacebookとTwitterはOSは持っていないものの、すでに世界中に多くのアプリユーザーを抱える巨大プラットフォームです。

つまりこの4社には「アプリをダウンロードしてもらう」というハードルがなく、BluetoothさえONにしてもらえればいくらでもプッシュ通知が送れるということです。
これにより、広告や新しいサービスを展開したい企業は、この4社が提供するサービス(OSやアプリ)をマーケティング戦略に積極的に活用するようになります。

これは企業側にとっても大きな利点で、自社アプリをダウンロードしてもらわなくても大量のスマホユーザーに自社の情報を送ることができるのはもとより、そもそもモバイルアプリをわざわざ開発する手間や費用も省けます。

またこれらの巨大企業は、自社のBeacon及びアプリサービスを使ってもらうことにより大量のデータを収集することができ、これを自社のサービスに反映させることができます。例えばすでに各ユーザーの年齢・性別・趣味趣向まであらゆる情報を抱えているFacebookは、どんな人々がどのお店に立ち寄っているかという情報をもとに、より的確な(ユーザーの趣向に合った)広告戦略を企業に提案することができます。

ユーザーには何の得があるの?

これこそが現在のBeacon業界における最大にして永遠のテーマです。いくら企業側のメリットになりそうな話でも、ユーザーがそれを使ってくれなければ何の意味もありません。事実、これまでのBeacon施策には「とにかく商品の宣伝やクーポンを配布しまくる!」といった、押し付けがましいばら撒き型のものが多くありました。ここでいくら割引券を配布してもユーザーにとっては「迷惑メール」と全く変わらず、BluetoothをOFFにするキッカケを自ら招いているようなものです。

ただ中にはBeaconで大きく成功している例もあります。例えば美術館ではBeaconを音声ガイドの代わりに採用することにより、以前までであれば来場者の歩くペースに関係なく自動再生されていた音声ガイドを、自分のペースで楽しむことができるようになりました。

小売業におけるBeacon施策にも同じことがいえ、「ユーザーの都合に合わせたプッシュ通知」こそが成功の鍵です。

急速に進化を遂げています

ここまでご説明したのはあくまで基本中の基本にすぎず、Beacon業界は日々驚くべきスピードで変わってきています。例えば先月Googleが発表したEddystoneという新しいBeacon規格には、IDではなくURLを直接スマホに送る機能があり、これによりサーバーやアプリを経由せずともそのままスマホに搭載されているブラウザを立ち上げられるようになりました。これは強力な武器であると同時に、前述したような迷惑なプッシュ通知の乱用につながる危険なツールでもあります。

現在の流れを見ていると「とにかくBeacon市場シェアを獲得したい!」という巨大プラットフォームと、「自社の商品をとにかく売り込みたい!」という企業側の思惑ばかりが先行しており、「ユーザーに喜ばれる」というサービスとしての根本的な部分がおざなりになっているように見受けられます。ユーザーが積極的に使いたくなるBeacon施策がでてくればBluetoothをONにしてくれる人々も増え、Beacon業界が盛り上がってくるでしょう。


※Apple、iBeacon、iOSは、Apple Inc.の登録商標です。
※Facebookは、Facebook,inc.の登録商標です。
※Google、Android、Eddystoneは、Google Inc.の商標または登録商標です
※Twitterは、Twitter,Inc.の登録商標です。